「おお、中々の人出ですね……」
「確かに、凄いな」


 バスに揺られ、駅前で降車。既に、その時点で人口密度は中々のものだった。ふと近くの看板に目を移せば、色々な催事のお知らせが張ってある。
 中でも、一際目立つカラーの絵。見目麗しき黒髪の少女が躍動しているものに目が行った。

「舞台挨拶、トークショーか」
「舞台挨拶、ですか?」
「ん。映画の初演とか公開に合わせて、アピールの為に出演者とかがスクリーンに来る、っていうイベントをやることがあるんだ」
「なるほど……しかし……」

 確か、記憶によれば、このポスターの映画は単館公演のはずが凄いヒットを飛ばし、結局ドミノ倒し的に全国に公開が広まっている映画である。
 そんな映画のヒロイン、と思しき黒髪和服……に、革ジャン……の少女を見つめつつ、セイバーは首をかしげていた。

「……これは……彼女、ですよね」
「……ま、まあ、とりあえず、ヴェルデに行こうか」
「は、はい」

 言わんとしていることは察したが、今はそれに言及すべき時ではない。恐らく、その判断で間違ってはいないだろう。
 取り敢えず、ヴェルデへ。今日の目的は、とにかく、茶碗を探すこと、なのである。


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