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 大晦日を経て、元日へ。 
 概ね、衛宮家ではゆく歳&くる歳を堪能したのち、柳洞寺にお邪魔し、初詣を済ませる……というタイムスケジュールである。
  
 少々離れているところに寺が位置していることから、当然、帰宅は夜半になる。 
 とはいえ、そこは大晦日〜元日のゴールデンな時間。千客万来衛宮邸にあっては、士郎とセイバーが帰宅した時間であっても、来客がのんびり寛いでいたりした。
  
「ねえねえ、そもそも、の話。クリスマスって、『長い』もんだったっけ……?」 
「どう定義されるかにもよるでしょうけど、一般的には『1日』ですから、そうはならないでしょう……。もう鐘は見たくないです……」
  
 ……のんびり? 
 と、いっていいのだろうか? 
 居間の特設炬燵に突っ伏していたのは、アルクェイド&シエルの両女傑である。只管「クリスマス」に関しての呟きが続いていることから、またもカルデアのクリスマスで何かあったのであろう。トラブル&ファンタジー。巻き込まれつつも楽しんで。当に、カルデアの真骨頂といっていい、のかもしれない。
  
 さてさて。
  
「セイバー。先にお風呂、どうかな」 
「私、で良いのですか? シロウも、身体が冷えているのでは」 
「ああ、ちょっと仕込みの仕上げをしたくてさ。上がる頃にはできてると思うから」 
「ふふ。そういうことでしたら」
  
 セイバーは、笑顔で応え、衛宮邸自慢の浴場へと向かう。それを見送りつつ、居間の二人に茶を出して感謝され、台所に戻った士郎は、「おせち料理における『デザート』」の出来栄えを確かめた。
  
「よし、いい感じ」
  
 デザート、即ち甘味。その中でも、おせち料理に入っていて違和感が無い──というより必須のラインナップ。それが「栗きんとん」である。 
 きんとん餡にはそして、サツマイモが使われる。 
 先の秋、とある農家さんのアクシデントが発端となり、お手伝いに入って収穫した多くのサツマイモ。その最後の一群を使った料理、でもある。
  
「本体の分は大皿に取ってあるから、と……」
  
 せっかくなので、フライングおせちとしよう。現在の来客分+自身とセイバーの分を小皿にとる。
  
「……これは、美味しい……身体に沁みますね」 
「不思議な味。でも、甘くて優しい……」
  
 普段、ころし愛の仲であったとしても、佳き甘味の前では平等である。 
 アルクェイドもシエルも、笑顔になってくれたのだから、それは実証されたといっていいだろう。
  
 さてさて。残る些事を片付けて、のんびり朝を迎えるモードに入ろうじゃないか。
  
 
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