――――――意外といえば、意外だった。
痛覚は無い。まあ、それは些細なことだ。死に瀕してそんなコトは気にならない。
厄介なのは悪寒や気分の悪さ。明確に周囲が色褪せて、段々と自分がこの世界から居なくなっていく感覚が怖かったのを覚えている。
しかし、一体これはどうしたことか。傷は痛む。出血は酷いし、致命傷じみた裂傷の感覚は我ながらぞっとするくらい。
だが、それだけ。それ以上、「死ぬんだ」と感じさせる感覚は、一切無い。
とても、あたたかくて、落ち着ける。
そんな空気に包まれて、そして―――――――
「―――――――! ―――――――!」
ああ、この声には聞き覚えがある。どんな時だって、それが俺を叱っている時だって、そんな彼女が居ることだけで、とても幸せだった。
なんて、懐かしい、響き。少しだけ、耳を傾けていたくなるような。
「―――目を、開けてください、シロウ! いつも貴方は無茶ばかりだ……!」
いつもこうやって、至らぬ主を諌めてくれた。
応えてやれなかったことも多かったけど。でも、そんな彼女の心配してくれる心は、何時でもありがたく感じていた。
「……こんなに、こんなにまでなって……。私が来ていなければ、今頃、貴方は……!」
……ごめんな。でも、いいじゃないか。こうして、お前の傍に来られたんだから、俺は――――
「凛も、桜も、イリヤも、大河も泣くでしょう。遺された者の心、考えたことがありますか……!」
声は涙声。だけど、お前らしくないぞ、そんな声は――――――
――――――と。
何か、違和感を覚えている。
彼女の言葉。その口ぶりからすれば、まるで――――――
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