夕焼けの新都を、二人で歩く。……まあ、滅多にあることじゃないから多少は緊張もするというものである。



「ホントは夜のほうがいいんだけど」

 自分から提案しておいて、そんなコトを堂々と宣う遠坂。まあ、魔術師の活動範囲から考えればそれはそうなのだが……。

「見回りくらいにはなるだろ。一応ここの管理者なんだし、それくらいの義務はあるんじゃないか?」
「まあね。今でも夜は時々回ってるし……で、衛宮くん」

 パタ、と、遠坂が足を止める。そこは丁度、昨日俺が「何か」を感じた場所。
 新都の駅前でもあり、冬木の重要な建物が集まっている一角だ。ヴェルデなんかは言うに及ばず。進出してきた企業のビル、冬木の公共機関、そんな諸々の都市機能がこの辺りに集結している感じである。

「ここで間違いないのよね?」
「ああ。大体だけどな。……まだ、何か残ってるだろ?」

 確かな違和感は、昨日より若干弱まっているとはいえ、存在している。どうやらそういう異変を拾うのは俺の得意とする方面らしいが、ソレを如何に分析するかはやはり師匠の方に一家言あるようだ。

 遠坂の目が厳しいものになっている。集中を高め、そこに存在する「跡」を見る。如何な行使か。魔術が神秘を以てセカイに干渉するものである以上、そこには何か、見えるものがあるはず。

「…………そうね、これは確かに魔力の跡。何か、行使された魔術があるのは分かるわ」
「それ以上は?」
「無理ね。大体、こんな弱いの気付く士郎だって凄いわよ。私だったら多分、見落としてたわ」
「え、ウソ……」

 少し、遠坂の言ったことは信じられない。確かに弱いものではあるが、そんなに見落とすようなものでも無いはずだが……。

「ともかく、ここから得るモノはないわ。士郎だって分析は未だ出来ないでしょうし、他を当たってみましょ。まだ何か、他に残っているかもしれないし」
「……ああ、了解。じゃ、もう少し続けるか」
「そうね。ここまで歩き回ってるんだから、少しは何か引っ掛かってくれないと癪だわ……」

 遠坂が呟いた言葉には、心底そう思っているという響きがある。魔術師気質、とでも言うのだろうか、ソレは遠坂とて例外ではない。……まあ、言ってしまえば、無駄というコトが本当に嫌いな人なのだ。




 
 

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