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 目を開ければ、昨日と同じ光景が広がっていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 カチ、コチ、と。一定に刻まれる音だけが響く、一人の間。そのことが何よりも雄弁に、現実の孤独を教えてくれている。
 
 時刻は、五時三十五分。特に何ということは無い、普段どおりの起床。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ―――――――そうか、また。
 彼女と過ごす夢を、俺は見ていたのか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 掌には、まだ感触が残っている。互いの体温を、確かに感じていたような。
 現実に触れていたわけもない。夢は夢、だから、これが幻覚なのは当然だ。
 
 ただ。二日続けて彼女の夢を見られるなんて、僥倖と言っていいのかもしれない。
 たとえ、それが虚しいセカイのことであっても―――――その姿を、忘れないで居られるのだから。
 
 何て、喜ばしい。ただそれだけで、いつもの夢は、とても嬉しいものになるはずだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 だけど。
 ――――ひとつだけ、おかしなことがある。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 「あれ…………何、で」
 
 
 あんなに、楽しい夢だったのに。
 何で、そんなものの痕が、頬に残っているのだろうか。
 
 
 
 
  
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