「二日目/4月14日」
……今日も、彼女の夢を見た。
その笑顔を、忘れることは無い。
怒った顔も、あわてている姿も、安らかな寝顔も。
全てが、美しすぎる思い出として、己が内にある。
それが、思い出でなく。
現実に、共に居られれば、と。
願ってはいけない何かを、見つめている。
本当に、何気ない一日。朝、おはようからはじまって、皆と共に過ごす一日。
それが幻なんて、目が覚めるまで気付こう筈も無い。
それほど鮮明で、楽しくて、幸せだった。
昨日の夢が、彼女と過ごせたのが、嬉しくて。
きっと、強く願ったのだろう。
夢の中だけでも。
せめて、――――――――
それがどれほど虚しいことか。夢から覚めれば、きっと気付くのだろう。
だけど。今の自分は、夢の住民。
―――――――儚い、その、あたたかさに。
触れることが許されるのは、今だけだから。
視界が、何かで滲む。
「――――――――?」
どうしたのか、と。そう聞いてくる彼女に、答える言葉が、無かった。
だって、言えるわけが無い。そんなに幸せなのに、怖いなんて。
「何でも、ないよ」
そう。きっと、なんでもない。
どこかで見える綻びも、顔を出した何か、見てはいけないものだって。
それに、気付いたところで。
俺には、どうしようもないんだから。
そんなことを。
滲んだ視界に彼女を見て、思っていた。
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