学校が終わってヴェルデに直行。何故なら、遠坂がああ言った以上、明日現物が目の前に無くてはならない。何となれば、その辺りが主導権の探りあいにおいて肝要な所だからだ。
さらには、若干男の意地も入っている。ああ言われた以上、ドーンと行ってやらなきゃ気もすまないし、桜やイリヤにもプレゼントしないとならないだろう。
うむ、下らぬ意地だ。笑ってよし。
「しかし、…………」
と、いざ探してみると中々に難しい。海の上で氷山を探すようなものだ。普段一緒に居る女の子でも、いざこんな段になれば趣向や好みなど、意外に知らない部分が多いことに気付かされる。
が、遠坂は例外である。彼女の場合は一発回答、真実はいつも一つと言わんばかりに好みがわかっているからして。
「宝石が一番喜ばれそうなんだけど。そんなお金も――と、無いわけでは、ないのか」
幸いといっていいのか或いは不幸なのか。先日丁度まとまったバイト代が入ったばかり。無茶な日雇いだった分、額は高く多少の無理は利く。…………少し台所に影響が出るかもしれないが、それはそれ。
どうせ買うのだ。それなりのモノを用意して、感謝させてやろうか。そんな邪神も頭を擡げてきた。
と、いうわけで。
「仕方ない。弟子は誠意を示すもの、だな」
遠坂には安売りの宝石でも買ってやろう。イリヤと桜には同じくらいの小物でも買っていくことにして。
なんていうか。柄じゃないな、とは思うのだが。
「ありがとうございましたー!」
イリヤ宛の莫迦高いキーホルダーを購入して、本日の買い物は無事終了。イリヤは根がお姫様なので、モノの価値が良く分かる。一応、プレゼントなら喜んでくれるのだが、この辺りにちょっとした気遣いを籠めていると、それが倍化するというのが経験則だ。
と。
「………?」
店を出る前、少しだけ、視線が気になった。
さて…………。
(誰に見られてるってわけでもなさそうだけど……?)
視線自体はそう不快なものではないが、なにかこう、人の全てを見透かすような感じ。
感覚自体は、遠坂のそれに近いのだが……?
「…………ん」
気のせい、か……?
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