「おはよう衛宮。今日も元気そうで何より」




 教室に入り、席に着くと、いつもどおり一成が挨拶をしてきた。

「おー、おはよう。新学期の雑務は片付いてるか?」
「大体は、な。運動部案件でいくらか抵抗がある所、どうもアレの影を感じぬでもないが……」
「また遠坂か。まあ、張り合ってこない遠坂なんか遠坂じゃないしな。一成だってやりがいがあるだろ?」
「はは。至極御尤もだが、冗談ではないな。個人の遣り甲斐と生徒会の実務を比べるわけにも行くまい」

 からからと、笑って一成は席に着く。
 朝の光景は、以前の日常そのもの。

 夢と、さっきの話で何となく感傷的になっているのだろうか。こうしてここで皆が居るコト。それを守れたことは確かで、胸を張っていいのではないか、と思う。


 何気ない普通の会話、いつも通りの学校生活。
 こんな平穏こそ、何にも代えがたい幸せな時と、気付いた今なら、尚更に。




 だからこそ。そんな幸せを、彼女に。  俺は、そう、願ったのだ。










 学校での時間は何事も無く過ぎていく。


 午前中の授業を受け、昼は一成と生徒会室で昼食。午後も何の変哲も無い授業。
 その中で、遠坂との会話が引っかかっていた。


「何も無きゃいいけど……な」


 聖杯戦争、その響きが頭から離れず。
 春の穏やかな光景に、何故か浸ることができないでいた。





   

 書架へ戻る
 玄関へ戻る