それが、はじまりだった。


 月が、王都を明るく照らす。窓から眺める景色は、幻想的ですらある。
 翌日より、彼は、この地を守り、王を守護する騎士となる。
 しかし、その王に、彼は――――


 宿で一人。胸に抱いた感情の処理に、彼は苦しむ。

「……………―――――」
 言葉にすらならない。先ほどから漏れるのも、悉くが嘆息のみ。


 育った湖の宮廷、そこに居たどの貴婦人より。いや、美貌を謳われる己が義母よりも。
 誰より美しい、少女。


 それは、許される感情ではない。少なくとも、彼にとっては。
 仕える主が少女だったとて、彼の忠誠は変わらない。彼女が偉大な王、アーサーであることに何の疑いも無いのは、間近で接して良く解った。
 伝え聞く戦場での武勇、領国の見事な統治。王都の民は笑顔に満ち、配下の騎士達も、それぞれに誇りを持つ男ばかりである。
 その全てが、彼の仕えるべき理想の主君に相応しい。


 しかし。この心は、どう処すればよいというのか――――?


「…………これは、何の定めだというのだ…………。」


 彼とて、未だ18の若人であった。
 その、「初恋」は。
 彼の仕えるべき、主君へのものだった。





 後記は雑記10/22にて……。
 暫定です……w⇒ web拍手



 Uへ


 書架へ戻る
 玄関へ戻る