「三日目/4月15日」















 そんなこと、はじめから分かっている筈だった。














 誰よりも、愛しい人。
 誰よりも、愛した人。














 そんな彼女を、忘れられる訳が無い、と。














 だから、今もユメに見ている。


 紡ぐ幻想は、いつかの願望。
 何かの、間違いでも。
 そんな未来がある、と。心のどこかで、信じていたすがっていた














 離れたくない。すぐ側で、幸せにしたい。
 だから、行かないでくれ―――――と。


 その心のままで、別れを迎えて。
 そんな願いは、封じた筈だった、のに。














 朝焼けの中、彼女と、再会を祝す。
 涙が止まることは無い。ただ、その確かなぬくもりを、感じていた。


 ―――――そんなユメ。
 誰が何と言おうが、深いところにある自分・・を変えられよう筈が無い。
 何度も、何度も。
 きっと、追い求めて、果たせず。いつか「衛宮士郎」が朽ち果てる、その日まで。




 …………永遠に、そんなユメを見続けるのだろう、と。
 彼女と再び出会った公園で、涙に暮れていた。




 きっと彼女は、嬉し涙と思ってくれたのだろう。
 私も嬉しい、と。
 そう言ってくれる言葉が、深く、心に突き刺さった。




 もう、二度と、届かない星。
 一層、強く抱きしめた。
 だって……だって、こんなに、こんなにも確かに、感じているのに―――――


















 ―――――――どうして?
            どうして……ここは、ユメのセカイ、なのだろうか―――――――


















 いつも、考えないように、目を向けないように、逃げ続けてきた想い。
 それは「いつも考えていた」裏返し。


 だから、こんなユメを見るのも、当然のこと。
 永遠に、消えない想い。
 “衛宮士郎”は、彼女を、ずっと追い続けている。
















     の温もりを感じながら、今日も、現実へと浮かび上げって行く。
 ……もうすぐ、この時間も、終わってしまうのだろう。




















  「さようなら」




















 別離の時でさえ口にしなかった言葉を、呟いた。
 怪訝そうにしている彼女の頬に、そっと、手を添える。




 ごめんな、と。
 最後に、そう、付け加えた。














 幸せな時間には、いつか終わりが来る。誰だって、そんなことを言っている。
 だけど、願ってはいけないのか。いつまでも幸せな時間を過ごしていたい、と。












 ―――――――せめて。
            頑張って、戦い抜いた少女には、それが許されれば良いのに。












 止まらない涙が、夢か現か分からない。
 また、何時見られるとも知れぬユメの世界。




 その、鮮やかな朝焼けも。もう、涙で、全く見えなくなっていた。




 


 

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