「ここが、例の洞窟、か」
「――その、ようですね」



 未だ暑さ衰えぬ八月某日、とある南の島。士郎とセイバーは、その島にある、とある「洞窟」の前に居た。
「凄いな、ここは。確かに、普通は入れもしないか」
「ええ。一体中に何が居るというのか……」

 二人は、緊張した面持ちで話している。目つきは真剣そのものであり、その頬には冷や汗が伝っていた。
 洞窟の入り口には、来る者を拒絶する力を纏うかのような、ただならぬ空気が漂っている。瘴気、と言い換えた方がいいだろうか。人為的なものか、あるいは自然現象か。いずれにせよ、その中に何が控えているか、二人は警戒せざるを得ない。

「行きましょう、シロウ」
「ああ」

 が、士郎とセイバーは、その程度の威圧で退散するほど軟な人物ではない。むしろ、分類とすれば明らかに剛の者と言える。「恐怖」を知って尚、それに打ち克つ「勇気」を備えているのだ。何より、彼らには、この洞窟に分け入らなければならない「理由」がある。 それは、とある人物からの依頼であったのだが――



 







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