力んだのは最初の瞬間だけ、畏れよりも何よりも、ただ抜けるという実感が先に立っていた。チン、と、硬質の石と、鋼の擦れる澄んだ音が響く。僅かに弾けた火花は消えることなく、この大地全てに弾け飛んだ。
人々の心を貫いたそれは、消えることなくある場所を指し示した。
誰しもが、一つの事を胸に抱いた。
騎士の誰もが、不満と不服を胸に抱いた。
僅かに一握りの者と、多くの人ならざる者だけが、ただ一途に彼女を祝福していた。
どう、と、吹き抜けた風が視界を奪う。顔に当たる細かい塵に、僅かな間目を庇う。乱された髪の向こうに、理ならざる力が見えた。いつしか強い風が天に吹いている。先程までの緩やかなそれとは違う、ごうごうと吹き付ける不自然な嵐。剣と彼女を中心に大きな雲が立ち上っていた。竜巻でも舞い降りるかの如く、暗く陰った雲が大地目掛けてその先端を伸ばしている。太陽は既に見えなかった、何かの起こる気配に遠い草原が戦いている。
不安はなかった、ただ、何が起こるのかを剣が知っているように。握りしめるだけで心が強くある。そうして、虚空から吹き付ける風に、魔術師の声を聞いた。
『聞け―――――父と子と精霊の御名の元、我、マーリン・アンブロジウスは―――――』
背後に集まる人の気配、我こそが王たらんとする彼らの気炎は高く、一所に集まればそれだけで火傷をしそう。
それだけに落胆の色は濃かった、疑問と、驚愕の色も。誰にも引き抜けなかったのだ、まるで岩と一塊になっているかの如き硬さで。国で一番の力自慢すら、僅かに動かす事も出来なかった。
それだけに衝撃だった。誰しもに突き抜けた選定の瞬間。瞼裏に焼き付いた光景、少女と見紛う程の小者が、容易く引き抜いた幻視。
大勢が集まるざわめきと、落胆の罵声。振り返ることなくその声を聞いて居た。閉じた瞳で見通す先は遙か遠く、この大地全てを睨み付ける様に。
『―――――ここにアーサー・ペンドラゴンの即位を認める』
厳かに高らかに。
玉座が据えられたと、宣言が成された。
「海鳥の詩」
Presented by dora 2007 07 20
ペンドラゴン。ブリテンを束ねる、竜の頭。それは、先王の姓で。
―――――驚きは無かったと思う。そんな気はしていたのだ、この男が、幼い頃に現れる度に。養父の何処か余所余所しい態度に。眠る前に思い出す、鮮やかな悲劇の情景に。
剣の柄を握りしめた。力一杯、血が滲むのならそれも良いと。
がちりと己のどこかで砕ける音がする。鍵を差し込まれた牢獄が開くように、手に持つ剣が私をこじ開けていく。血の巡る場所に、意思の通る場所に、私の中のあらゆる場所に、今までに知らなかった、内側に。万色の世界が展開される。細かな管を光が満たしていく。
そうして封じられた怪物が目を開く。燃えさかっていた。虹色の世界の中心で赤く燃え上がる竜が吠えている。一際大きな咆哮と共に、私の中に溶けて消える。身悶えするような衝動に走り出したくなるのを、ただ堪えて火勢を上げる。息をするだけで体に力が満ちた、鞴が炉に風を送るように。何よりも速く、誰よりも強く。火でも吐きだしそうな気炎。
沸き上がる物をそのままに、目を見開く刹那―――――その影を、見た―――――
閉じた瞼が開いて、景色を映し出すまでの隙間。表情はなかったと思う、僅かな邂逅故に、見取るだけの余裕はない。
怯えと、揺らぎと、人としての在り方を、全て詰め込んだ彼女。
名前すら残らない―――――もう一人の私。
決別は瞬く間に、振り返るだけの余地はない、全ては此処に置いていく。
―――――幼い日、怯えた夢は遠く。
私は此れよりブリテンとなるのだ。
沸き上がる力、駆けめぐるそれを一所に注ぐ。振り返って空を睨み付けた、貫くのは其処。他の誰も目に入らない。意識は剣の切っ先に、あらゆる全てをつぎ込んで、心のままに突き上げる。
『―――――聞け』
爆音が轟いた。あらゆる声を圧するそれと共に、百万の雷を束ねたが如き光が世界を照らす。汲めども尽きる事のない力を、ただただ剣に注ぎ込む。まるで太陽が降りたが如き熱、直視どころか目を開ける事さえ出来ぬ眩さ。それを構うことなく天を睨み付け、剣を振り下ろす。
『貴公等が何を目的として此処に集ったかは知らない。立ち去れとも私は言わぬ』
傲岸ともとれる言葉。誰しもが、一つの思いを胸に集ったというのに。この場に集った者の望みなど、我は知らぬと。玉座のみが望みならば其処までの者。我はその先こそを見ると言外に言い放つ。
『此処は我が願いにしてブリテンの悲願をくべる竈。それを否と詰るのならば、互いの立場は明確だ』
高らかに響く言葉、涼やかに紡がれる意味の裏側に、籠められた願いなど余人には知れぬ。
『―――――此処に剣の裁定は下った。
王権は定められたのだ。
私とくつわを共に並べ、私と生死を共にし、我が剣と共に在らんとする物は前に出よ。この剣にかけて貴公等の未来を切り開こう!』
大地に突き立てた剣は金色に。一瞬の暴力は既に無く、ただただ尊い光を放っている。只の鋼ではなかった。武器と呼ぶ事すら躊躇われる王権の象徴。ほとばしった光が正当性を叫び立てる。
『我が名はアーサー、是より我が剣はブリテンとあり、我が運命もまたブリテンと共にある。従う者は在るか』
驚くほどなめらかに、その名を口に出していた。雄熊と、猛き者と、生まれたときから名付けられていたかのように。誇り高く響く声は、集った全ての者を圧倒した。
言葉には全てが籠められていた。私利無く、私欲無く、ただブリテンの為に在らんとする意志の輝き。身動きどころか呼吸すら止める沈黙、誰しもが、視線を彷徨わせる中、ゆっくりと魔術師が傅いた。
『我が主よ、偉大なるブリテンの守護者よ。私が貴方の知恵と為りましょう。万難排する星読みと共に、マーリン・アンブロジウスが傍らに』
『しかと聞いた。マーリン卿、貴公の知恵を頼ろう』
父と、そう呼んだ騎士が跪いた。
『我が主よ、エクターめが剣をお受け下さい』
兄と、そう呼んだ騎士が跪いた。
『我が王よ、ケイめが剣をお受け下さい』
倣うように、我も我もと騎士達が跪く。
『―――――王よ、我が剣をお受け下さい』
荘厳な光景だった。赤々と照らし出す太陽は西に傾き、彼女を背後から支えている。照らし出されるのは騎士達の面で、様々な色が其処を彩っている。
『しかと聞いた。貴公等の剣を受けよう。我が旗下に在る限り、我が議卓に着く限り貴公等に上下はない、また―――――私に才無くば切り捨てて王位に就く事を許そう』
確かな約定、怯むこと無く言い切った。
どよめきの中、一度だけ、長く眼を瞑った。思い起こす事はなく、ただ思い描く未来だけがある。
成すべき事は多くある。是より先、余計を入れることなく私は剣の王となる。
『マーリン、王剣の鞘をもて。エクター、騎士を纏めよ。ケイ、入城する。号令せよ!』
『竜旗を上げろ!』
『馬を引け!』
手渡された鞘に剣を落とし込むと、差し出された外套を肩に纏った。金糸が縫い込まれたビロードの、毛皮で裏打ちされた豪奢な外套。強い風にもがんとしてなびかないそれも、重いとは思わなかった。羽根のように軽いと、ただ心が躍っていた。黄金作りの王冠は己が手で頭に乗せる。先王のそれに合わせられた物か、己の頭には僅かに大きい。一度仕立て直ししなければならないと、額まで落ちそうになるそれを手で直しながら思った。
『進発する』
牽かれてきたのは、後にブリテンの馬の代名詞ともなる、漆黒の軍馬。はち切れんばかりの力を、厚い皮の下に秘めている。軽く首を叩くと、一息に背に飛び乗った。外套を打ち振るうと、それだけで指先からほとばしる魔力が金糸に絡んで輝きを見せる。この外套も魔術師の手による物なのだろう。馬腹を蹴った。馬は並足からすぐにだく足へ。無限の未来が開けている。そんな気がしていた。
『全隊前へ!』
更に速度を上げる、後ろで、ケイの号令と共に全てが動き出す気配。強風に翻る竜旗が甲高い音を放つ。幾つもの村を横目に駆け抜けた。白く輝く石造りの古城は、じき見えてくるだろう。
叫んだ。腹の底から。何か滾る物をぶちまけるように。縦に伸びた隊列はまるで竜の体のようで、街道を疾駆する轟きは遠雷の様。気炎を上げれば雄叫びも咆哮の如く、斜陽に赤く照らされたブリテンの竜がカメロット目掛けて疾駆する。
そうだ、思い出したところで後悔など無い。
誇り高く心高く騎士王としてあった日々。その終わりが滅びだとしても、それを悔やむ事など無い。答えは得ている。私は、私のままでこの場所に居る。
騎士としての誇り。王としての責務。サーヴァントの願い。
己の持ちうる祈り全てを貫いて、今此処に立っているのだ。
アルトリアの見た、夢の続きの中に。
いつの間にか、瞳を閉じていたのか。思い描く過去から戻り、谷川へと視線を下ろす。清らかな流れがあった。ただ、生まれた場所は思い出さない。急峻な川など、この場に来て初めて見たのだ。
「セイバー」
そう呼ばれるのは幾度目になるのか。死に至る微睡みより聞き慣れた呼び名が沁みていく。ちらちらと躍る木陰に、斑に照らされながら振り返った。
少年はひどく渋い顔をしている。苦い物を唇に乗せると、いつもの様にを心がけて笑った。
「貴方が気に病むことではない、ランスロットの事は、終わってしまったことだ。それを理由に気遣う必要など」
「何も、感じなかったって言うのか」
苦い顔をしながら彼が言う。そっくりだった。何時かの夜に見た、ランスロットの表情と。誰かのために心を痛める、そんな不思議なひと。そんな余計な部分を、私は持っていられ無かった。
「そんなことはない、大きな疲れを感じました。また考えることが増えた、と」
「だったら―――――」
更に言い募ろうとする彼を制する。顔が引きつりそうだ、慣れない表情は長く続かない。いつまで保てるものかと、僅かに思案する。
「シロウ。私は、その程度の苦難では贖えないだけの血を流した」
言葉の頭は強く、言葉尻は、どこか風に滲んでいた。だから―――――
「関係ないだろう、味方が離れていったのに、辛くないはずなんてない」
―――――容易く踏み越えられて、息が詰まる。
壁など無いのだ、否、在ったところで、言葉で彼が止まらないことも、知っていたはずなのに。どれほどの理屈を重ねても、ただただ感情だけで踏み越えてくる。いつも私がそれに引きずられて―――――ああ、いや。それではいけないのに。
「……それはよくわかりません。辛いとは、一度も思ったことがありませんでした」
「なんだそれ、どういう意味さ」
そう、本当に解らない。
辛いとはどんな事なのか、苦しいことはあっても、辛い、という意味が私には解らない。出来る限り力を尽くして、それで届かないことが、辛いというのだろうか。
だったら、それを誰よりも知っているはずの彼が、それを私に言うのはおかしいだろう。
「彼に向けた不平も募っておりましたから、私はそれも国策として組み込みました」
人間は複雑な構造より、単純な世界を望む。外敵は、内側を纏めるのに一番分かり易い手段で。
収まりの付かない人間も居たのだ、とくに、彼が城を離れたことでそれは顕著になった。ガウェインの気勢は荒く、許しがなければ自分だけでも彼を討たんとしていて。
「話を逸らすなよ、俺は国の事を話してるんじゃないんだ」
己を瞞す嘘すらも、容易く見抜く目を持っていたのか。ばっさりと切り捨てられた、論点のすり替えは意図したところではないのだが。
「む―――――」
これではいけない。と、頭では思うのに口は動かない。
「誤魔化すなよセイバー、……いや、まてよ。誤魔化すって事は、やっぱり何かあったって事じゃないか」
切り込んでくる。シロウは、ただまっすぐに。心の赴くままに。
「そんな―――――ことは」
息が乱れた。それと解らない程度に、細く震えて。くらりと世界が回る、自分で目を逸らしていた釜の蓋が開く様に。
―――――そういえば。
遠い日の戦場で並び駆けて、競った事もあったと。
ドゥン・スタリオンを駆けさせた、敵陣は未だ整わず、正面からでも大きな打撃を与えられる。出来るだけ深く切り裂きたいと思っていた、数では相手の方が上だ、整ってしまってからでは手が出しにくい。全速で草原を切り裂いていく、抜きはなった剣を下げて、誰よりも速く―――――!
『突撃せよ、私に続け!』
突出していた、それは、味方からも敵からも、誰が見ても明らかで。体勢を立て直す前に、討ち取ろうと思ったのか。前列の兵が有機的とは言いがたい動きをする。囲むつもりか、容易くこの首が落とせるとは思わないことだ。
不意に馬蹄の轟きが重なった、何者かが、追従してきたのか。音は後ろから横合いに並ぶと、抜き去らんとばかりに加速していく。見知った顔だった。癖の強い、豊かな黒髪。兜は身につけていなかった、兵士を鼓舞する為か、己と同じように、その面を外気に晒している。振り向いた横顔は生気に溢れて。
『王、先陣は俺が!』
そう言って更に加速する。馬も限界など知らぬとばかりに足を飛ばした、僅かな間見送って、直後に負けん気が頭をもたげる。鞭をくれた、姿勢は低く、ただ速度のみを馬に求める。
『何を言う、貴公に任せていては纏まる者も纏まらぬ!』
僅かに追い抜いた、舌打ちと共に、更に彼が速度を上げる。馬の限界は、お互い近いようだった。それでも負けるのだけは看過できない。
『ク―――――言われたものだ。ならばお目にかけよう、御覧あれ!』
飛来した槍を彼が撃ち落とす。地に落ちる前にそれは、二つに切り飛ばされていた。達者な腕だ、それに目を細めることなく馬を寄せる。風に吹き流される声は大きく、戦場を席巻する、目前の兵がどよめき立った。我らを意に介さず、と、それだけで人は向かってくる者を畏れる。
『先駆けは許さぬ! ―――――だが、そうだな。並び立つならば』
これ以上飛ばしては馬が潰れるだろう、だが、この負けず嫌いはそれでも前に出ようとするだろう。そう思って、隣にあることを許した。
『えーえー、俺はいっこうに構いませぬ、むしろそちらの方が好ましい』
出てくる言葉は軽く、とうてい戦場にあるとは思えない。飄々として強く、ただ前を見据えている。
『言うものだ』
『主が負けず嫌いな上に口べた故』
思わず眉をひそめた。不遜にも程がある、流石に咎めようと思い彼を見た。
『……ランスロット、口が過ぎるとは思―――――』
『御主君、敵陣は目前! そら!』
『っ! 良い、追及は後、―――――だ?』
敵陣。
敵陣までは、未だ数百ヤードの余裕がある。胡乱な視線を送った、折れた話の腰は戻りそうにない。飄々とした空気のままで、彼はまた横に距離を広げている。
『ランスロット』
『そのまま忘れてくださると幸いですな』
『何か言ったか!?』
『いーえ!』
軽い頭痛。軽視しているわけではなく、ただ性分として縛られぬ男。軽く振ってわだかまりを捨てた、今はそれどころではない。
『……合わせろ、離れた後、隣に戻れ』
『承知仕った』
やりとりは僅かに左手で。僅か一瞬に全てを終わらせる。視線を正面に据えた、是より先、弱手の事は気にかけなくて良い。ただ右手の敵を見つめるのみ。
後数ヤード、直後に激突音。衝撃と共に視界がぶれる。考える余裕はなかった、ただ目前の敵を切り伏せるために剣を振りかぶる。
―――――それは。
今ある楽しみと、どこか並び立つ楽しさではなかったか。
対等とは言い難い。彼に笑いかけることもない。気を抜けば食い合う様な激しさで。
それでも、私は楽しみにしていなかったか。彼と競い合うことを。並び立つことを。
まっすぐで、強情で、不敬で不遜な彼。
目の前の誰かに似た、最高の騎士。
―――――今にして思えば。
彼は私の、唯一の友人と呼べたのではないだろうか。
『―――――王には人の心が解らない』
私はあの時、どんな顔をしていただろうか。
振り返ったランスロットの表情が揺れて、歯を食いしばって部屋を出て行った時。何か、胸の中を風が吹き抜けたような気がした。
ペンを取るのも億劫で、考えは一瞬で纏まらなくなって。
それでも、やることは多くあってあたまがいたい。
考えつかれて眠りについた。
疲れは結局とれなかった。
「―――――あったのかも、知れません」
ただ、それがよくわからなかっただけで。彼が離れていくのが、辛かったのかも知れない。
「だが、過ぎたことだ貴方が気に病む必要はない」
下がりそうになる視線を、引き上げていった。
「それはセイバーが気を回す事じゃない、俺が勝手に心配しているだけだ」
「その気遣いが無用だと言っているのです」
かっとしたのか、かっとなったのか。それとも、かっとさせたのか。徐々に強くなる語勢に、こちらのそれも強くなっていく。
「そんなこと無い、俺が考えなければ他の誰が考えるんだ」
「独善的な―――――、余計なお世話だと言っているのが何故解らない!」
「よけ―――――自分も見ない奴がよく言えるな! それに俺のこれは性分だ!」
「別離は貴方にだってあったはず、無かったとは言わせない」
「う゛、セイバーには関係ないだろう」
「いいえ、キリツグと関係があるのは貴方だけではない」
「ぐ―――――切嗣のことなんて、それこそ、今、関係ない、だろう」
「積み重ねた屍を無関係とするなら、貴方のそれも同じだ、どうしてそれを解ろうとしない!」
「知るか! 只気に入らないからだ!」
「知る―――――子供か貴方は!? 以前にも言ったことだがシロウ、貴方はまず第一に己の事を顧みるべきだ!」
「ふざけんな、どうして俺の話になる! 言い逃れも大概にしやがれ!」
「は、笑わせないでください。自分を横に置いて人のために何かが出来るだなんて大きな間違い、それが未だに理解できていないのなら貴方は昨年の貴方に劣る!」
「笑わせんなよセイバー、お前だっていつまで経っても同じ事言いやがって、何時までも成長しない奴だな、こっち来て半年が経つんだ、いい加減解れよ!」
「どの口でそれを言いますか!」
「この口だバカヤロー!」
「うううううううううううう!」
「うううううううううううう!」
「この意地っ張り! 頑固者! 意固地! 鈍感! 鉄板!」
「うるさい馬鹿! 鰹節! 鉄面皮! ずく! 鋼よりも炭素多いんだよ!」
「は、鰹節は出汁がとれるから良いんです! それこそシロウは石か何かで出来ているでしょう? 煮ても焼いても食えないとはこのことだ! バカでモノズキ! お人好し! 命知らず!」
「お人好しの何が悪い! 命知らずはお前だって似たような物じゃないか! 炭素多すぎてばりばりに割れるくせに! 鋳物専用鉄め! そもそも物好きってなんでさ! 言ってみやがれ!」
「言われて怯むな! そんなこっ―――――」
『ん……別に、まずくはない、けど……しいていうなら汗みたい、かな。セイバーの匂いが、する』
『っ……! ばばばばばバカでモノズキですか貴方はっ……! よ、よくもそんな、私を辱めるようなコト、を』
―――――ガッデム。
どの口でそんなことが言えますか。
〜To be continued.〜
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