| 
 
 
 
「……」
 
  
 腕時計に目をやる。もう、何回目になるのか、数えてみていたら面白かったのかもしれない。けど、何度見たところで、まだ約束の時間じゃない。いくら時計に促してみたところで、針の速度が速まるわけがないのだ。
  
 それでも、その動作を繰り返してしまう。普段よりずっと、時間の流れが遅いように感じてしまうのは、なぜか。時間は、人それぞれに流れる速さが違う、と、どこかで読んだことがある。
  
 それなら、「恋」もきっと、流れる時間を遅くする要因のひとつ――の、はずだ。
  
「……逢……」
  
 付き合い始めてから、一週間と少し。それも、もう去年のことになった。今の時刻は、午前0時5分。新年がはじまって、もう五分も経っている。
  
 大晦日は、家族と過ごした。それが普通だし、脱け出して……というのは、部屋住みの身分では少々難しい。その代わり、と言ってはなんだけど、ちょっと部屋に籠って長電話をしてみたり、電話をしながらゆく年くる年を見て、除夜の鐘を聞きながら新年のあいさつをしたり……と、出来る限りのことはやったつもりだ。
  
 そして、今。長電話の最中に約束した、初詣の待ち合わせ中――それが、先ほどから何度も時計を見ている理由だった。
  
「初もうで、行きませんか?」と、切り出されなければ自分が言うつもりだった。電話で声を聞いていると、会いたくてたまらなくなってしまう。初もうでというイベントは、その格好の口実を与えてくれる素晴らしい習慣だ、と思う。
  
 ……0時、6分。どうして、こうじれったいのか。逢との電話を切ったのは、0時1分。新年のあいさつをして、約束を確認して、すぐ。それから、まだ五分しか経っていない。
  
 待ち合わせの場所は、逢と下校する時、いつも別れる場所だった。ただ、そこから家までの距離……となると、自分のほうがずっと近かったはず。つまり、同じ時刻に出たとして、逢がここに来るのはまだ先のことになる、という計算が出来る。
  
 あと、何分だろうか? 数分は最低でもかかる、と思う。こんなに一分が長く感じられるのに、これが数分……となれば、一体どれほどの時間なのか、それは自分に想像も出来ないほどだった。
  
 思わず、天を仰ぐ。大晦日から元日にかけては、幸い「快晴」の予報が出ていた。星が、満天に輝いている。きっと、初日の出も、綺麗に見えるのだろう。午前0時7分、時計を見ながら、そう思った――
 
 
  
「先輩!」
 
 
  
 ――その瞬間、だった。 
 逢の、心地よい声音が、僕の耳に飛び込んできたのは。
 
  
「お待たせしてしまって、すみません。はぁ……急いだん、ですけど……」 
「あ、……」
  
 0時7分。まだ、逢が来るまでには時間がある、と思っていたのだけど――これは、思わぬ僥倖。嬉しい限り、としか言いようがない。 
 少し、予想より早かった理由は、逢を見ればすぐに分かった。
  
「自転車?」 
「はい。歩きだと、ちょっと遅くなっちゃいますから。 
 あ、そうだ……」
  
 自転車を降り、道の脇に置くと、逢は鍵をかけて、こちらへと向き直る。
  
「あらためまして。あけましておめでとうございます、先輩。 
 今年も、よろしくお願いします」 
「うん。あけましておめでとう、逢。今年も、よろしくな」 
「はい」 
 
 新年のあいさつを、口頭で。さっき電話でも同じやり取りがあったけど、面と向かってするのはまた別の趣がある。
  
 出会えた去年に、感謝を籠めて。 
 そして、共に居られる新年が、素晴らしいものでありますように。
  
「じゃあ、早速行きましょうか。あの神社、ですよね?」 
「うん」
  
 逢は自分から僕に右手を差し出してくる。握ろうか……それとも? 
 ……うん。やっぱり、今日は寒い。彼女と一緒に歩くなら、手を握るよりも、もっとあたたかいほうがいいだろう。
  
「……!」 
「……」
  
 逢の右腕を、僕の左腕で絡め取る。腕を組めば、体も近くなる。 
 寒い夜だから、きっと、これが正解だ。
  
「……クス」 
「……」 
 
 声に出さず、照れ笑いを交わす。そんな時間が、心地よい。 
 神社まで、歩いてどれくらいだろうか。とにかく――着くまでは。新年一番の、逢のぬくもりを、こうして感じていることにしよう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
「結構、人が居るんですね」 
「そうだな……」
 
  
 逢と腕を組んで、他愛ない会話をしたり、ぬくもりを楽しんだり……そんな風に歩いてきた沿道には、それなりの人出があった。目的地の神社自体はそう大きいものではないが、それでもやはり大晦日、というところだろうか。
  
 参道には、夜店もいくつか立ち並んでいる。帰りには、ここで少し休んでいくのもいいだろう。 
 そんなことを考えつつ、神社への階段を上り、鳥居の前に立つ。
  
 ……ここは、二人の思い出の場所。
  
「ふふ」 
「……?」 
「一緒に、見に来ましたよね。今は咲いてないみたいですけど……」 
「ああ」 
「あの時は……こうして、一緒にいるようになるなんて……」 
「思ってもなかった?」 
「……んー、……いえ。今考えたら、どこかでそんな予感があったんだと思います」 
 
 少し恥ずかしそうに笑い、彼女はそう言ってくれる。 
 
「そっか」 
「はい。予感的中、です」
  
 組んだ腕に、もう少し力を入れる逢。僕の方はどうだろうか……? あんな衝撃的な出会い方をして、痴漢とさえ間違われて……でも、いつのまにか、どんどん逢に魅せられていっていた。
 
  
 どんな子なんだろう、とか。 
 一緒に話したら、どんな会話になるのかな、とか。 
 一緒に歩いてみたら――楽しいだろうな、なんて。
 
  
「先輩は、どうですか?」 
「僕?」 
「はい」
  
 ……そんなことを考えていたのは、事実。そして、逢がとても温和で、穏やかで、優しい子だ――と、分かっていった。 
それは、魅かれていた、ということだけど――でも、はっきり言ってこんなに仲良くなれるなんて、僕は思っていなかった。 
 
「……僕は、自信がなかったな」 
「自信?」 
「うん。女の子と付き合う、なんて経験なかったしね。逢と仲良く出来たのは嬉しかったけど……。やっぱり、自信はなかったよ。こんな風に、付き合える、なんて」 
「クスッ。じゃあ、運が良かったんですね、お互い」 
「運、か……」
  
 確かに、言う通りかもしれない。逢が好きで、逢に、もしかしたら好意を持たれているかもしれない、と思って……それでも、あの時のトラウマを超えて、逢をクリスマスイブのデートに誘うのは、正しく清水の舞台から――の気持ちだったのだ。
  
 その勇気を持てたから、こうして二人で歩けている。 
 あたたかい彼女を、傍に感じている。
  
 ほんの些細なことだったけど――きっと、それだけの勇気が持てたのは、運にもよるに違いない。
  
「そうかもしれないな」 
「そうですよ。神様に、お礼を言わなくちゃいけませんね」
 
  
 楽しそうに笑う逢と手を組んで、あの時見上げた桜の木を後にする。
  
 また来年も、ほころんだ花を、一緒に見上げられますように。 
 新年の願い事が、またひとつ新たに加わった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 鳥居をくぐり、柄杓の水で手を洗う。冬真っ只中なだけあって水も冷たいけど、丁度目が覚めていい、という面もある。今日は、「この後」のために昼はしっかり寝ているけど、それでもこの時間は少しの油断が睡魔を誘い込むものなのだ。
  
 逢も、同じように手を洗っている。 
 うん。……手が冷えるのは、良くないことだ。
  
「逢」 
「……あ」
  
 逢が手を拭き終わったのを見計らって、その左手をそっと握った。手袋じゃなくて、直に彼女と触れるとすれば、今しかないと思ったのだ。
  
「……もう」
  
 逢はそう言いながら、少しも嫌そうな顔はしていない。残った右手に手袋をはめ、左の手袋はコートのポケットに仕舞う。
  
「……」
  
 きゅ、と、握り返してくれる手の感覚を楽しんで、本殿に向かう。
  
 その本殿前は、初詣客でいっぱいになっていた。だから、腕を組まなくなった分は、「人ごみの中だから仕方なく」逢に体を寄せることで挽回する――と、いうことだ。そう、なるべく小さくなっていないと、周りの迷惑になるだろう。だから、こうして体を寄せていても、何も不自然なところはなく、むしろ当然のことなのだ。
  
「……先輩」 
「……」 
 
 困ったような、それでも、嬉しさを隠せないような。 
 逢のそんな表情が、僕は大好きなのかもしれない。
  
 
 近くに居てくれるだけで、あたたかい。体も、心も。逢と知り合って、互いをよく知るようになって、ずっとそう感じている。
  
 だから、この手を離したくない。人ごみでも、なんでも、傍に居てほしい、と思うから、少し強くその手を握る。指をからめて、掌を合わせて。会話はなくても、それだけで、心が通うような。
  
「お賽銭、用意しなきゃ」 
「そうだな。……えーと、」
  
 もう、本殿はすぐそこだった。予め賽銭は別にしてポケットに入れてあるから、逢の手を離す必要はない。どうやら彼女も同じだったようで、握っていない方の手で、ポケットから金を取り出している。
  
「えい」 
「よっ」
  
 コインを、同時に賽銭箱へと投げる。浄財、というほどこちらの信念が高潔なわけじゃない。ただ、金額の多寡はそれぞれでも、それと引き換えに叶えて欲しい何かがある。その想いは、意外と純粋なものなのかもしれない。
  
 から、から、と、木に金属が当たる音がする。
  
「お先に、失礼します」 
  
 流石に新年だけあって、鈴も普段より多く設置されている。普段は一か所だが、今日は3か所。そのうちのひとつ、縄を握り、逢は力強く鈴を鳴らした。 
 後を受けて、僕も鈴を鳴らす。
  
「――――」 
 逢と一緒に、二礼、二拍し、目を閉じて心の中で願い事を唱える。 
 ……無論、願うことは、決まっている。 
 世界平和、家内安全。そこは毎年願うこと。  
 そして、自分のこと。 
 今年は、――いや、これからずっと。多分、毎年願い続けるだろう。
  
 逢が、幸せでいられますように。 
 二人、仲良く過ごせますように。
  
 最後に一礼して、目を開ける。 
 ――まだ、逢は願い事の途中だった。
  
 静かに、手を合わせ、微動だにしない。 
 背筋はピン、と伸びていて、その姿勢の良さを感じさせてくれる。 
 穏やかな表情には、少しだけ笑みが浮かんでいる。
 
  
 ……さて。 
 一体、何をお願いしているんだろうか。
  
 そのまま十秒ほどして、逢はようやく目を開け、一礼した。
  
「それじゃ、行きましょうか」 
「うん」
 
  
 逢に促され、二人で拝殿を後にする。
  
 ……願い事が、叶うといい。 
 ……いや、叶えて見せる――と。
  
 逢の手を握りながら、いつもの年よりもずっと強く、僕はそう考えていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
「えーと、たこ焼き二つと、……お好み焼きひとつお願いします」 
「あいよー。酒は?」 
「んー……じゃあ」 
「未成年なんで、結構です」 
「毎度。しばらくお待ちくださーい」
 
  
 新年だから無礼講……と思ったが、そこはしっかりと逢に遮られた。とにもかくにも、お参りが終われば、次の楽しみは夜店である。普段食べているものとさして変わりはないのだが、なぜか夜店で買ったり、食べたりすることには格別な趣があるように感じる。祭り好き……という土地柄と何か関係があるのだろうか。
  
「先輩。いくら新年だからって、こんなところで羽目を外しちゃダメですよ。先生に見つかったりしたら大変ですし」 
「はは……そうだね。ちょっと悪ノリしすぎたかな」 
「そうですよ。悪ノリなら、二人きりのところでしてください」 
「……え?」 
「……あ。……な、なんでもありません」
  
 顔を赤らめて、苦笑する逢。……うん、コレは、二人きりの時に悪ノリして欲しい、という風に取っていいのだろうか。……いや、いいはずだ。よし。 
 反語的にそう受け取り、この後の「悪ノリ」に思いをはせる。
  
「に、賑やかですね……」 
「そうだね」
  
 逢はそうやって話題を変えようとしてきたが、そうはいかない。言ったことの責任はちゃんと取らなければならないのである。
  
 それにしても……と、周りを見回してみた。確かに、逢の言う通り。入る時にも「座る場所があるかな?」と思ったほどの人の入りだ。夜店の中でも最大の面積を取ってあるここは、屋台の奥に広々と休憩スペースを取ってある。自分たちは、運よく一番右隅のテーブルを取ることが出来た。ゆっくり休憩しながら語り合うには、ここが一番の場所だろう。
  
「みんな同じじゃないかな? 夕飯が蕎麦で、そろそろお腹が空いて……」 
「そうかもしれませんね。私もお腹ぺこぺこです」 
「はは、僕もだよ」
  
 天幕の下では、店員さんがせっせと働いている。注文を取り、注文を運び……と、その動きを見ているだけでも「繁盛」の二文字を思い浮かべてしまう。 
 と、―― 
 
「お待たせしましたー。たこ焼き二皿、お好み焼き一枚ですねー。お茶のおかわり要りますかー?」 
「あ、お願いします」 
「私も、お願いします」
  
 その中の一人が、さっきの注文を持ってきてくれる。今日は品物の回転率もいいから、作り置きのお好み焼きが出て来る、ということもない――つまりは、焼き立てのお好み焼きと、焼き立てのたこ焼きを味わえる、ということだ。
  
 屋台ゆえの宿命、多少高くはあるが……それもまた、休憩料込みで御愛嬌……と、いうことにしておこう。
  
「夜も長いしね。しっかり腹ごしらえしとこう」
  
 たこ焼きは十個入りを一皿ずつ、お好み焼きは二人で一枚。食べる前に、まずはお好み焼きを二つに分ける。
  
「ここで均等にしとかないと、美也ともめたりするんだよなあ……」 
「あ、先輩もですか? 私も、時々郁夫と……」 
「でも、逢は譲るんだろ?」 
「え、ええ……」 
「逢は優しいからね。僕の方はいつも戦場だけど……」 
「――そ、そうですか」
  
 そう。ちゃんと数を数えていないと、後々の空腹感に影響するとあって、食卓は常に戦いなのだ。ただ、逢ほど歳が離れた姉弟だと、そう争うこともないかもしれない。こちらは年子……一年しか歳が離れていないので、実力伯仲、そうも言っていられなかったりするのだ。
  
「それじゃ、いただきます」 
「いただきます」
  
 手を合わせ、箸を割り、まずはたこ焼きから。逢はひょい、とひとつ取り上げると、碌に冷ましもせずに頬張った。
  
「ふー……あ、あふ……、……ふ!」 
「ん?」 
「あふひ……ほ、ほれ……あふひ……、……ん、……んっ」 
「……熱い?」 
「……、……!」
  
 息を吹きかけて頬張っても、熱いものは熱いらしい。口の中で熱を持てあまして、逢が涙を浮かべながらたこ焼きと格闘している。 
 前にも……あれは、大判焼きだっただろうか。同じことがあったのを覚えている。あまり熱いのは得意ではないのだろう。……いや、ますます、猫のようだ。
  
「……、ふー、……」 
「あはは、冷ましてからでないと、そりゃ熱いよ」 
「そ、そうですね。失敗しました……」
  
 逢はお茶を口にして、少しでも中の熱を冷まそうとしている。ただ、お茶もあたたかいものなので、あまり効果はないだろう。
  
「すみません、お冷もらえますかー」 
「はいよー」
  
 ここで必要なのは、冷たい飲み物、である。店員さんにそう注文すると、紙コップに入った水がすぐに運ばれてきた。
  
「ありがとうございます……」
  
 こく、こく、と、逢は水を口に含み、ようやく一息ついた様子だった。冷静そうに見えて、時折こんな一面も見せてくれるから、とにかく彼女は可愛いのだ。
  
「ふう……落ち着きました。できたてなのはいいんですけど……」
  
「あはは、災難だったね」 
「ええ。少し、冷ましてから食べることにします」
  
 もう一口、逢は紙コップに口をつける。
  
「口の中、大丈夫? 火傷とか……」 
「あ、それは大丈夫だと思います。先輩がすぐにお水を頼んでくれましたし」 
「そう?」 
「はい。心配ありがとうございます」 
「はは……」
  
 今度は、こちらが照れ笑いをするほうだった。正面から丁寧にお礼を受けると、人間少し気恥ずかしくなるのが当然、というものだ。
  
「……あ」 
「……?」
  
 もうひとつ、と、たこ焼きを頬張ると、逢が何かに気付いたようにこちらの顔を見つめて来る。
  
「……クスッ。先輩……ふふ……」 
「ど、どうしたんだよ急に……」 
「だって、先輩……それ……クス……」 
「?」 
「口の横、青ノリついてますよ」 
「な、……く、た、たこ焼きか……」
  
 急いで、口をぬぐう。これでは、逢のことを笑えない。こちらも、急いで頬張った故の失敗であることは変わらないのだ。
  
「取れてますね。でも、おかしい……青ノリが、先輩の……」
  
 何がツボに入ったか、逢の笑いは止まらない。こちらも、つられて苦笑してしまう。
  
「あー、面白かったです、先輩」 
「逢も、ね」 
「くす。これで、お互い様ですね。 
 そろそろ……少しは冷めたでしょうか」
  
 逢は、再びつまようじを取り、たこ焼きに挑みかかる。今度は、もう熱さに参る、ということもなさそうだ。
  
「美味しい……ですね。タコも大きいです」 
「そうだな。ジャンボって肩書は伊達じゃない、ってことか」 
「そうですね」
  
 他愛ない会話で、新年の一時を過ごす。賑やかな天幕の下では、似たような、ありふれた会話がどこでも繰り広げられているのだろう。
  
 ――だが、それが日常の幸せ、というものだ。 
 逢と一緒に、そんな新年を過ごせている。 
 
 初めての……そして、これからずっと、と願わずにはいられない、幸せな時間。 
 逢とのおしゃべりを楽しみながら、これからの予定も反芻してみる。それは、きっと、とても楽しい時間になるに違いない。
  
 鰹節が、お好み焼きの上で踊っている。 
 ゆらゆらと。まるで、ゆっくりと流れる、この時間を現しているかのようだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
「美味しかったですね、先輩」 
「そうだな。屋台の割に……いや、屋台だから、かな」 
「屋台だから、じゃないですか? きっと」 
  
 たこ焼きとお好み焼きを平らげ、どんぐりあめを逢と選んで、鯛焼きを4匹買って、僕達は未だ賑わう神社界隈を後にした。 
 二期桜が、また来年も咲いてくれることも願いつつ。逢の右手を、参道を去る今も握っている。
  
 初詣に来る人の流れは、途切れることを知らない。もう一時を回った頃だとは思うが、正月の夜はこれからが本番、という感じだろうか。 
 その人たちと逆方向に、僕と逢は歩いている。そう。「この後」は、僕の部屋に行く予定になっているのだ。
  
 ……もちろん、こっそりと……親に見つからないように。美也も父さんも母さんも寝ているから、大丈夫だろうとは思うけど、やはり念には念を入れないといけない。
  
 もちろん、鯛焼きもどんぐりあめも、その時のための食料である。夜は、これからが本番だ。語りあかして、そして、初日の出を見る。それが、僕と逢で話して決めた、正月未明の過ごし方、なのだから。
  
「それにしても……本当に、大丈夫でしょうか?」 
「何が?」 
「先輩の部屋に行く、というのは嬉しいんですけど……」 
「ばれないか、ってことかな」 
「はい」
  
 逢が心配になるのも、無理はない。前に部屋に入ってもらった時は、両親美也共に外出していた。だから、何の気兼ねも無く入ってもらえたのだが、今日は確かに話が違う。
  
 ……だが、その心配は無用、杞憂というものだ。
  
「大丈夫だよ。この日の為に、僕の部屋へはルートを2つ作ってあるんだ」 
「ルート、ですか」 
「うん」
  
 庭には、どこの家にも大抵あるとは思うが、物置がある。そして、その中には梯子もある。 
 そして、僕の部屋、窓のカギは開いている。ある意味、泥棒に似た侵入の方法だけど、家人がやるなら問題はないだろう。
  
「わかりました。先輩を信じます」 
「任せてよ」
  
 後は、多少の運。初詣の後なのだ。それくらいは、ついてきていると信じたい。
「お邪魔しまー……す」
 逢は、小声でそう言って、そっと敷地の中に入ってくる。……別に、誰が起きているわけでもないんだけど――そういう律儀なところも、彼女の美徳と言っていいだろう。 
 それでも、自分まで抜き足になってしまうのはどうしてか。夜中に、彼女と一緒に、それも家族に内緒で、特殊な方法で部屋に忍び込む……という、背徳感がそうさせるのか。
  
「よいしょ、と」 
「梯子……ですね」 
「うん。窓のカギは開いてるし、高さも丁度いいからね」 
「ふふ。何か、ドキドキしますね、こういうの」 
「僕もだよ」
  
 梯子をそっと立てかけ、固定されているか確かめる。ここが第一の難関、と言っていいだろう。怪我なんかした日には、目も当てられないことになる。
  
「じゃ、僕が下で支えてるから……逢は、先に部屋に入っててくれるかな。僕は、梯子を片付けて玄関から入るから」 
「はい。……あ」 
「?」 
「くす。……ジーンズで来て、正解でした」 
「……!」
  
 ……なるほど、それは運が無い。
  
「先輩。えっちな目になってますよ」 
「……逢が悪い」 
「ふふ。そうですか?」
  
 いたずらっぽく笑うと、逢は梯子に足をかける。 
 みし、と、梯子につきものの軋む音がする。別に不良品でもなんでもないのに、少し不安がよぎるのは、誰でも変わらない習性のはず。
  
 逢が落ちないように、落ちてもしっかりと受け止められるように、細心の注意を払いながら……もちろん、その注意を払うには、見上げる格好になるわけだが――
  
(……こ、これは、これで……?) 
「先輩。何か、えっちな視線を感じます」 
「……凄いな、逢は」 
「先輩のことなら、何でも分かりますから」
  
 窓の真下あたりまで登っていた逢から、お叱りを受ける。……いや、本当に、もう完全に手綱を握られている感じだ。
  
「んっ……と、では、お先にお邪魔しますね」 
「うん」
  
 からから、と音を立て、僕の部屋の窓が開く。逢は猫のように軽やかに、開いた窓から室内へと入って行った。
  
「さて、と」
  
 後は、梯子を片付けて、堂々と入るだけである。 
 もちろん、家族を起こさないように、そっと。特に、美也辺りに気付かれれば致命傷だ。
  
 悪いことをしているわけではないのに、悪行に手を染める快感がある。……いやはや、新年早々、中々スリルある冒険をしているではないか、自分は。 
 そう思うと、心も躍るようだった。部屋には、逢が待っている。そのことも、もしかしたら、そんな感覚を押し上げてくれているのかもしれない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
「あれ?」
 
  
 お茶、ジュース、買い置きのお菓子などその他もろもろ、一通りお盆に携えて、部屋のドアを開けた。……が、なぜか、逢の姿が見えない。
  
「ん……おかしいな?」
  
 暗いから、見えないだけだろうか。そう思って、電灯のスイッチに手を――
  
「――、う、わ?!」 
「ふふ……驚きましたか?」
  
 ――伸ばそう、と思い、部屋に一歩入った時点で、横から何か衝撃が襲ってきた。 
 ……随分と、柔らかい衝撃だ。もふ、というか、ぽふ、というか、そんな感じで――。
  
 ぱち、と電灯を点けると……
  
「逢……」
  
 衝撃の正体は、逢だった。横から、抱きしめるような形になっている。
  
「……悪い子だな、逢は」 
「そう……かもしれませんね。いい子なら、こんなことはしませんか?」 
「いや……」
  
 いや、こんなことをしてくれるわけだから、それはそれでいい子……なんだろうか。 
 ……よく、分からなくなってくる。
  
「……どうだろう」 
「クスッ。分からないですか」 
「うーん。まあ、危なかった、ってことだけは……」 
「……あ」
  
 そこで、ようやく逢は、僕がお盆満載のお菓子、飲み物類を持っていることに気付いたらしい。
  
「す、すみません……。やっぱり、悪ふざけが過ぎましたね」 
「いや、別にかまわないよ。落としたわけじゃないし、ね」 
「……」
  
 逢は離れると、苦笑いを浮かべて頬を赤らめる。……いやほんと、そういうところがとんでもなく可愛くて……誰だろうか、彼女を、取っつき難いとか素っ気ないとか思っていた大馬鹿野郎は。
  
 僕はお盆をベッドの上に載せると、押し入れから座布団を二つ引っ張り出して、片方を逢に勧めた。
  
「コート、適当に置いといていいよ」 
「はい。ありがとうございます」
  
 逢は言われたとおりにコートを脱ぐと、ベッドの隅に丁寧に置いた。黒のハイネックに紺のジーンズ、そんなシンプルなのが、逢には良く似合う。彼女が流行の派手で煌びやかなファッションを身につけていても、それはどうかなあ……と、思うような気がする。ある程度カジュアルなのは似合う気がするけど、やっぱりシンプルなのが良い、と思うのは変わらない。
  
 僕は、ベッドのそばに座布団を置き、ベッドを背もたれ代わりにするように腰を下ろした。彼女は、僕の左隣に座る。……付き合い始めてから、ずっと、彼女は僕の左を定位置にしているらしかった。今では僕も、左に逢がいる時が、一番落ち着けるようになっている。
  
 ……なるほど。恋人が居る、というのは、こういうことなのかもしれない。 
 それに気付けただけでも、去年は実り多き一年だった、と評することが出来るだろう。
 
 
 
  
 リモコンでスイッチを入れ、暖房をかける。今日は、これからゆっくりこの部屋で過ごすのだ。もちろん、寒い中で温めあうのもいいのだが、今日は話が違う……いや、待てよ。それもありか……
  
「先輩?」 
「……うーん……」 
「どうしたんですか?」 
「あ、いや、なんでもない」
  
 ……いや、それで睡魔に襲われてしまっては元も子もない、か。まあ、とにもかくにも、暖房はつけておいて間違いではないだろう。お茶もお菓子も用意した。今日はこれから、映画をゆっくり見ることになっている。
  
 僕と梅原が徹底討論して作り上げた「彼女が出来た時に見る映画一〇〇撰」から、今日という日の為に選りすぐった作品を用意してあるのだ。恋人と見て、しっとりした空気に包まれたい。いつの日か。それだけを夢見て用意したリストだけに、僕にも梅原にもその撰には自信がある。
  
 そして――悪いな、戦友よ。僕が先に恋人を見つけた以上、このリストは僕が使うべきものだ。……孤独な大晦日を過ごしているのだろう。しかし、僕は……我が道を行き、ただしっとりした空気を味わうのみ、だ。
  
「……あの……先輩」 
「ん?」 
「ニヤついてますよ? 本当に、どうもしないんですか?」 
「も、もちろん。そ、それよりさ。今日は映画見よう、って言ってたよね」 
「ええ。何を選ぶかはお任せしましたけど……」 
「ちゃんと用意してあるよ。途中で寝るなよ? 逢」 
「当然です。先輩こそ、眠そうにしてたら起こしますからね」 
「はは、心強いな」
  
 無論、寝るつもりなど毛頭ない。この時の為、きちんと30日から二日がかりで体調を整えてあるのだ。それもこれも全て、大晦日から正月という、特別な時間を逢と楽しく過ごすため。
  
「じゃあ、早速……」 
「はい」
  
 用意していたDVDを棚から取り出して、ゲーム機に入れる。こういう時、プレイヤーが無くても見られるのはありがたい。
  
 さて……逢は、気に入ってくれるだろうか。 
 映画は前後篇二本立て、時間は大体3時間半。 
 そして、その後は公園に行って、初日の出を見る。
  
 これが、プランである。スムーズに、心地よくその時間を過ごすためにも、是非とも逢には気に入ってもらいたい、と思う。
  
 ……自信は、ないわけじゃない。
  
「ふふ」 
「……」
  
 再生のボタンを押し、部屋の電気をリモコンで落とす。逢は、証明が暗くなると、僕の方に体を寄せてきてくれる。
  
「――」 
「……先輩」
  
 ……肩に、手を回しても、多分怒られはしないだろう。 
 小さい逢の体を感じながら、ゆっくりと映画を見る。
  
 至福の時間。
  
 ……やっぱり、逢がいてくれて――恋人になってくれて、本当に良かった。 
 新年、逢と一緒に過ごして、二時間弱。たったそれだけで、その想いは、去年よりもずっとずっと大きくなっていたのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
「……ああ……」 
「……おお……」
 
  
 余韻、というのは、こういう感覚を言うのだろう。
  
 実は、僕はこの映画、梅原と既に映画館で鑑賞済みだったりする。こっそり間の休憩時間に聞いてみると、逢も見たことがあったのだとか。そういえば、梅原と選定した時は「相手が見ているかどうか」という一項を完全に飛ばして考えていたから、それはそれで仕方ない。
  
 でも、逢は「もう一度見たかった」と言ってくれた。僕も実は、何度見てもいいんじゃないか、という作品だと思っているわけで。
  
 エンディングテーマ、流れていくテロップ……この二つが、なんとも言えない爽快感というか、感動というか、そんな感覚を呼び起こしてくれる。話自体は有名で、昔実際にあった戦いを、人物が絡み合うのを描きながら表現した作品だが……いやはや。
  
「……やっぱり、いいな……」 
「そうですね……私も、そう思います……」
  
 その爽快感は、思わず涙を浮かべさせる魔力を持つ。別段、悲しい物語というわけではない。そうじゃないのに、感動が涙を呼ぶのだ。僕も、逢も、目が潤んでいることに変わりはない。
  
 時代を超えて尚、愛は普遍なのだ……。 
 そんなことを、感じさせてくれた映画だった。
  
「先輩……」 
「ん?」
  
 顔が、すぐ近くにある。クライマックスでは、それこそずっと手を握って、互いの興奮が伝わるような気さえしていた。 
 そんな逢が、呟いた。
  
「……先輩は」 
「うん」 
「あんな風に捕まったら、助けてくれますか?」
  
 くす、と、少し微笑み交じりに。……これは、試されている。映画のヒロインが決死の覚悟で敵に乗り込み、戦場に取り残されて絶体絶命になり……というのが、最後の筋だった。「あんな風に」とは、そのことを指しているはずだ。
  
「もちろん」 
「ふふ。期待していますよ」 
「助けられたい? 逢は」 
「私、ですか? ……んー……」
  
 指を唇に当て、少し考える逢。
  
「そうですね。先輩にああして抱きしめてもらえるなら、それもいいかもしれません」 
「……」
  
 ……それは、抱きしめて欲しい、と言っているのか。 
 きっと、そうだろう――と、解釈しておこう。
  
「……先輩」
  
 小さい逢の体が、両腕の中におさまる。
  
 この瞬間。逢と密接して、彼女との一体感を強く感じられる時間。 
 ……愛おしい。それは、まるで自分の延長でもあるかのように愛しくて、通じ合っている、と思う感覚。
  
「ん、……」
  
 逢が、僕が、互いに互いを独占している。 
 それが、二人の関係に相応しい、と思う。
  
「……あ。先輩、見て下さい」 
「……おお」
  
 そんな幸福に浸っていると、逢が何かに気付いたように声を上げた。僕も、その意味を察する。 
 空が、少しずつ、光を取り戻してきている。 
 今年、初の夜明けが、近い。
  
「ちょうどいいかな。そろそろ、行こうか」 
「ええ。……もう少し、こうしていたいですけど」 
「はは、僕もだよ。でも、それだと初日の出に間に合わないしね」 
「そうですね。また今度、お願いします」
  
 
 答えるまでもない。いつでも、四六時中そうしていたい、と思うほどなのだから、もちろんOKに決まっている。 
 返答の代わりに、ぽん、と、逢の頭に手を載せる。
  
「じゃ、行こうか」 
「はい」
 
  
 互いのぬくもりから離れ、それぞれ外套を着込み、外出の準備をする。 
 行き先は、高台の公園。あそこからなら、綺麗な初日の出が見られるだろう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
「意外と、人出があるね……」 
「そうですね。ここからなら、良く見えますから」
 
  
 高台の公園には、ちらほらと、初日の出見物らしい人々が見受けられた。みんな考えることは同じなのか、カップルの姿も多少目につく。 
 ……ある意味、思い出の場所――と、言えなくもない。中学三年の頃、もうどうしたらいいかわからないくらいの屈辱を味わった公園。
  
 けど、今は違う。 
 隣には、正真正銘の「彼女」が居てくれる。
  
 勢いや、ノリや、上辺だけとか……そんなのではない、と、信じられる絆。 
 握る掌に、手袋はない。つけてきてもよかったのだが、こうして互いの体温を感じあえる方がいいかな――と、僕は思ったのだ。彼女も、そう思ってくれているのだろうか。……いや、きっとそうだ。
  
「この辺りがいいですね」 
「うん。ここからなら良く見えると思うよ」 
「はい」
  
 柵の近く、人がいない所に二人で陣取る。冬の朝特有の、刺すような、だけどどこか心地よい朝の空気が、呼吸するたびに体に満ちていく。 
 隣には、逢が居る。 
 柵にもたれかかるように、二人で、新年の夜明けを待っている。 
 空は、もう大分明るんできた。闇夜の主役だった星は、その存在感を少しずつ薄め、東から来る朝の使者へとその座を譲りつつある。
  
「――」 
「……」
  
 その心地よさを、逢も共有してくれているのだろうか。 
 まだ、手は握ったまま。だけど、何か、それだけでは不足するような、飢餓感に似たものが生じてしまう。 
 愛しさが募って……と、しか、言えない。握った手をそっと離す。意外な、少し悲しみを乗せた表情を逢が浮かべる前に、離した左手を逢の肩に回し、そっと抱き寄せた。
  
「……ふふっ」 
「……」
  
 そうして見せてくれる笑顔は、まるであどけない子猫のように可愛い。……夜明けの方に目を向けるのを一時やめて、そんな逢の顔に見入る。 
 抱き寄せられるまま、体重を僕の方に任せてくれる逢。しっかりと、受け止めるその重みは、僕が決して離してはいけないものだ。
  
 想いを、新たにするまでも無い。だけど、初の日の出に誓っておくのはいいだろう。 
 彼女の隣に居て、逢を支えることを。
  
「……あ、見て下さい」 
「うん」
  
 逢に促されて、視線を上げた。 
 地平からのぞく、白い光。 
 新しい一年を告げる、一月一日の夜明けだった。
  
「……綺麗ですね」 
「そうだね」
  
 言葉にすれば、それだけで十分だろう。高台から見る夜明けは、美しい。眠っていた街は再び光に満ちて行く。その様子を眺めるのに、これほど適した場所はないのだから当然のこと。
  
 けど、胸中は全く別。夜明けを綺麗だ、と、思う心だけではない
  
 二人で見に来られて良かった。 
 一緒に見られて、嬉しい。 
 そんな想いもまた、付け加えなければならない。逢と見る初日の出。その感慨としては、どれも切り離すことのできない一体の想い。
  
 同じ小学校に、高校に通っていても、出会わない人も居る。 
 そう考えたら、自分と逢が出会えたのも、ほんの偶然のひとつにすぎない。 
 だからこそ、大切にしないといけない。その偶然が、一生を捧げるに足る彼女との出会いだったのだから。
 
  
 輝く朝日に、そんなことを誓ってみた。 
 抱き寄せた逢の体温は、どこまでも温かく、僕の心を安んじてくれる。 
 ……そんな彼女の傍に、ずっと居られるように。 
 彼女が傍に、居てくれるように。
 
  
 ――逢と一緒に、新しい一年を過ごしていこう。
  
 
  
  
  
 少しばかり遅れましたが、七咲さんSS第三弾をお届けいたしましたw 取り敢えず、付き合い始めがイブですから、正月イベントは外せないだろうと!(どういう理論だ)
  
 何にしても「イチャイチャさせたろう」という、それだけを第一義にして書いてみました。あの神社にそんな夜店が出るのかは分かりませんが……w 
 ちなみに、映画はレッドクリフです。見た方なら、何となく分かるかな……?
  
 しかし、背景はもうちょっと用意したかったなあ……。こういう時、ストックがものを言うのですが、ちょっと合うのが少なかった……というより、アマガミは固定背景がありますので、使いにくかった……(苦笑)。あと、文章がちょっと長くなってしまったので、アップする作業が遅延いたしました<(_ _)> 次は短めに、恋する乙女でも書いてみようかと思いますw
  
 それでは、お読み頂きましてありがとうございました!<(_ _)>
 
  
 面白ければ是非w⇒ web拍手 
 
  
 書架へ戻る 
 玄関へ戻る
 
 
 
 |