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 「私は、………――――」
 
 
 空が、突き抜けるほど蒼い。
 残酷な色。それが思い起こさせる人物に、彼は押し潰されそうになる。
 せめて漆黒であれば、幾分か救われようものを。
 
 
 城壁の上に立つ、一人の騎士。
 ただ、一つの方角だけを、凝視している。
 見やる草原には、三日前まで雲霞の如き軍勢がひしめいていた。
 
 それを率いたのは、かつての主。
 
 「……………こんな、ことが」
 
 未だに、信じられない。
 あれほどまで尊敬し、終生の忠誠を誓ったはずの、王と。
 
 
 ―――――いや。
 ひとりの、――――として、――――
 
 「……………………ッ!」
 城壁を叩きつける。
 やり場の無い怒り。滲み寄る無力感。
 美しさを称えられた貌は、涙で歪んでいた。
 
 その采は常に的確。
 国を守るため最善の策をとり続け、ただ民のために死力を尽くす王を、支えた。
 それが、誇りだった。
 
 かつては。
 いや、今も、戻れるならば、戻りたいと願う。
 殺した同胞を、犯した罪を。
 
 
 ――――何より――――。
 
 
 「私は、あなたを――――…………!」
 
 
 
 続く
 
 
 
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