「イヤーッ!」「イヤァーッ!」「イヤーッ!」「イヤァーッ!」「イヤーッ!」「イヤァーッ!」「イヤーッ!」「イヤァーッ!」「イヤーッ!」「イヤァーッ!」タツジン! 実際ネオフユキ市民が上空を見上げたとて、二人の交錯は一瞬の光芒にしか見えないであろう。
だが、ニンジャ動体視力をお持ちの読者諸兄には明らかであるように――そう、それは実際にユニヴァースをさえ感じさせる、青と赤、そして漆黒の交錯。カラテとカラテがぶつかり合う至高のイクサなのだ。
(このワザマエ――)ニンジャスレイヤーは驚愕していた。恐らくこの目の前の、ニンジャですらないモータルの少女は、あるいは自らがカラテを交えたどのニンジャよりも高度なカラテを内に秘めている可能性がある。
同時に、清らかであった。純粋な怒り。怒りによって衝き動かされている、という点では、ニンジャスレイヤーもセイバースレイヤーと名乗る少女も変わりはない。だが、この清らかさは、この爽やかさは一体。
「キシ・ドー」ニンジャスレイヤーは、期せずしてそうつぶやいた。そう、歴史に隠されたニンジャ真実に詳しい読者であればその単語に聞き覚えがあるかもしれない。遥か彼方平安時代、ニンジャが各地の文明を裏から操っていたであろう時。
その魔手は当然のことながらブーリーテンたる北の島国にも及んでいた――ピクトなるニンジャ尖兵を巧みに操ったバンゾク・ニンジャクランの手により、表から裏から侵略が起こっていた時代。一人の王とその配下、キシ・ドーの華と謳われた者たちが、その侵略に果敢に立ち向かっていたのだ。
実際王の国は滅ぼされた――古事記にも記載される奸智の女傑モルガーン・ニンジャをはじめとする王に仇なすものを、結局止めることはできなかった。ニンジャとはかくも恐ろしきものだが、しかし。
王が、その臣が体現したキシ・ドーは時代を超えて実際語り継がれた。そう、誰もがその体現者と謳う人物――恐らくは非ニンジャで唯一、その侵略に互角めいて渡り合えた者。それが、キング・アーサー。あるいは、その本人か……とさえ、ニンジャスレイヤーは感じ入っていた。
「――フッ」唐突に、セイバースレイヤーはその剣を下した。なぜか、ニンジャスレイヤーにもそのタイミングが分かる。恐らくは、彼女の高度なキシ・ドーが、ニンジャスレイヤーの精神に共鳴めいたものを届けているのであろう。
「カラテあるのみ、か。実際至言」セイバースレイヤーは不敵に笑う。「貴殿のカラテからは邪気を感じる。いや、邪気しか感じぬ。だが、悪と言えるだろうか? いや、悪のみではない」平安時代の高貴な言い回しであるハンゴめいた呟きのあと、セイバースレイヤーはニンジャスレイヤーに背を向けた。
「どうだ、タイガ・フジムラ=サン」「ふふ……ドーモ、はじめましてニンジャスレイヤー=サン。タイガ・フジムラです。ああ……でも実際ニンジャネームで告げるのであればそう、ジャガーマンです」そして、その視線の先には20代半ばと思しき女性が居た。彼女は――ニンジャスレイヤーも驚きを隠せなかったが――ニンジャソウル憑依者であった。
「ドーモ、はじめましてジャガーマン=サン。ニンジャスレイヤーです」イクサではなくともアイサツを欠かせば実際シツレイにあたる。古事記にもある通りだ。「ニンジャスレイヤー=サン。ペイン・オブ・ソウカイヤと呼ばれた貴殿のカラテ、とくと見させてもらったわ」
「なるほど、セイバースレイヤー=サンはつまり」「そう、あなたを試させてもらった。『敵の敵は実際味方』と平安時代の剣豪ミヤモト・マサシちゃんも言っていたのは間違いない。故に」
ひとつ、ジャガーマンは呼吸を置く。「これから始まる大いなるイクサのために。ネオフユキのロンゲスト・デイに実際備えるために、私は、フジムラ・ニンジャクランは、あなたに申し入れる」ジャガーマンは、強いまなざしをニンジャスレイヤーに向ける。
「そう、同盟を」奥ゆかしい倒置法が、実際ジャガーマンの決意を表していた。暴虐と非道のソウカイヤ、そしてアマクダリ・セクトを撃退する、という、鋼めいた仁義の意志を――。
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