ふと。足を止めて、あの夜を思う。


 澄んだ夜気に、浮かぶ星月も美しく。それを、彼女に擬えたこともあった。








「――――問おう、」








 果てしなく美しい記憶は時に、今も瞼に蘇る。


 蒼き騎士の、その出で立ちは勇壮で、気高く。








「貴方が私の――――」








 暗い土蔵。差し込む光が照らし出す、英雄の貌。


 その時から。ずっと、こころを占める、少女の姿。






 戦いの日々も。別れて、二度と会えないと思った夜も。


 そんな彼女と、今を、共に生きている。






 大切な人が、出来た。


 家に、灯りが点るようになった。






 だから、そう。こんな澄んだ夜気は、今日という夜に相応しい。


 今なら。その問いにも、自信をもって応えられる気がしていた。






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