「……そんな感じのゲームだな、コレは」
「……全く分からないぞ美綴」


 あたたかい春の昼下がり、衛宮邸・居間。おだやかで平和なひと時だが、しかし、その一角だけは「戦場」と化していた。


「心が折れる、ってのがどういうことか、厳しく教えてくれるゲームなんだ」
「そういうもんか……」

 発端は、衛宮士郎、そしてセイバーの親友である美綴綾子が、とあるゲームを手土産に、衛宮邸に遊びに来た数日前、であった。
 彼女曰く、「2が発売になったから、1を貸しに来た」とか、なんとか。話を聞けば、どうやら以前からセイバーはそのゲームに興味を持っていたらしい。
 この街で暮らすようになってから、セイバーは色々な方面で交友を広げている。綾子とはもっぱら、武術にゲーム。こと、アクションゲームに関してセイバーはかなりの練達を見せている……と、士郎は綾子に聞いた記憶がある。彼女の類稀なる反射神経が、アクションゲームに合っている……のかもしれない。

 そんなセイバーに、綾子が薦めたのが、「そのゲーム」であった。
 風の噂では、とある小説家がそのゲームにハマりこみ、本来の業務である執筆が完全にお留守になってしまうほどの中毒性がある――の、だとか。
 それはともかく。綾子は、「そのゲーム」を、セイバーに教えてしまったのだ。



 そして、現在。


  「……綾子。どう考えても、このゲームはおかしい。これだけ強い敵に2体も向かってこられては、勝てるわけがないではありませんか!」

 キャラクターの悲鳴、そしておどろおどろしい効果音と共に、「YOU DIED」というこれまた強烈な恐怖を惹起する赤い文字がテレビに浮かぶ。
 同時に、セイバーは涙目&涙声で士郎と綾子の方を向き直り、そう叫んだ。

「やー、それがこのゲームなんですよセイバーさん。幾度となく死に、絶望し、心折られ、それでも立ち上がる者こそが勝利を得られるんです」

 それを見た綾子は、得意満面でそう言ってのけた。ちなみに、彼女はこのゲームを3周クリアした上、オンライン対戦でもかなりの戦績を上げる程の猛者であるらしい。
 その彼女がそう言うのだから、相当ハードなゲーム、なのであろう。セイバーが涙目になる、という一点からしても、その難易度がうかがい知れる。

「……くっ、……いや、ここで止まっては騎士の名折れ……! 見ていなさい龍狩り、処刑者! 我が剣さばきにて、そなたらを斃してみせる!」

 綾子に諭されたセイバーは、流石と言うべきか、即刻テレビへと向き直り、プレイを再開させた。
 その後ろ姿を見て、綾子は満足そうに頷く。

「ふふふ、その意気ですセイバーさん! あ、気に入ったら2も是非やってみてくださいね」
「望むところです! てやああああああああ!」

 セイバー裂帛の気合が、居間に響き渡る。
 ……いや。あるいは――いや、まぎれもなく。
 これもまた、「平和な日々」のひとつなのだ、と、士郎は苦笑しながら立ち上がった。

「はは……うん、ま、ゆっくりしてけよ美綴。後で皆も来るだろうし」
「おーす。世話になるぜー」


 さて、主夫はもてなしを業とするものである。
 ゲームに熱中する恋人を、にやにやと楽しげに笑う親友を、そしてまだ見ぬ来客を、あたたかいお茶と美味しい茶菓子で歓待し、癒すのだ。
 それが、彼の輝ける日常。その向こう側には、きっと、幸せがあるだろう。



 ……というわけで、突発4・1企画やりましたよ志貴さん!w はい、ご存知の方もけっこういらっしゃるのではないかと思いますが、題材はフロム・ソフトウェア製のアクションRPG(と言うのか?)、『DARK SOULS』シリーズです。ちょうど発売してすぐ、というタイミングですし、それこそコハエースでこのネタが取り上げられたこともありましたので(アンバサ!)、ちょっと使ってみた、という次第ですw ……多分次のコハエースでも来るんじゃないかな、「きのこ仕事しろ」w

 読んで感じて頂ければ幸いなんですが、前半のパートは士郎君をイメージして描いています。もちろん、「輝き」とはセイバーさんのこと。『輝きの向う側へ』という言い回しは、これもまたもちろんアイドルマスターの劇場版から、ですw 書いていて思ったのですが、「不死」となって、幾度となく死に、を繰り返し、摩耗して行く……という、ダークソウルの亡者の在り方は、ある意味『アーチャー』に近いものがあるんじゃないかなぁ、と感じたりも。それでも尚、セイバーさんの『黄金の輝き』は、彼にとっても、士郎君にとっても、永遠なのだろうなあ、と思う次第であります。まあ、このお話では、美綴さんの脳内妄想として、当然ギャグとして書いているんですけどねw

 ちなみに、ゲーム自体は、本物の鬼畜死にゲー、です(笑)。自分はといえば、親戚がクリアしていたりで大体の話や流れは知っていますが、肝心のプレイヤーとしてはセンの古城を越えたあたりで心折れた青ニートと化した程度、だったり……w ……いや、そう、セイバーさんが作中で嘆いていた『あいつら』のせいなんですけどね!w

 ネタが分からない、と感じられた方も、コハエースの単行本などお手元にありましたら、是非『ダークソウル』『フロムゲー』などの単語を連発するコハクさんを探してみてくださいw コレが、そのゲームなのですw

 それでは、今年もお付き合い頂きまして、ありがとうございました!<(_ _)>

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